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ピーターラビット

【DOG BLESS YOU】編集部オススメのエンタメをpick upする[Editors’ One] (Wan🐾!)
小さな命、自然との共生、、、大切なメッセージとともに、素敵な作品をご紹介します。 第1回目は「ピーターラビット」。

 たぶん世界で一番有名なウサギさん、ピーターラビットの、これが初の実写映画です。原作は、英国の女流作家ビアトリクス・ポターの絵本『ピーターラビットのおはなし(原題:The Tale Of Peter Rabbit)』。出版されたのはなんと今から1世紀以上前の1902年と言いますから、驚異の超ベストセラーです。

 主人公のピーターは、バッグス・バニーやミッフィーよりもずっと前に生まれ、日本でも金融機関から自動車、調味料、飲料、レジャーランドまで多種多様なジャンルのイメージキャラクターに使われてきて、当たり前のように私たちの身近にいる存在になっています。ところが、今回の映画。横っ飛びのピーターがスローモーションになる予告編からも少なからず想像できるように、可愛らしいウサギさんが繰り広げる平和なおとぎ話を求めてお子さま連れで劇場に出かけたりすると、だいぶ面食らうことになりそうです。その裏切られた感は、見かけと言動のギャップで笑わせてくれた邪悪なクマのぬいぐるみ、テッドのそれに近いところはありますが、自堕落で破廉恥なテッドと違い、このピーターの場合は知恵者で無鉄砲。そして好戦的。『ホーム・アローン』のケビン坊やさながらに、いささか度を越したいたずらを繰り出していくのです。

 映画でも、その昔、ピーターのお父さんはマグレガーおじさんの畑に入って捕まり、パイにされてしまった(!!)という背景や、それでもなお畑の作物を狙うやんちゃなピーターとそれを追いかける宿敵、マグレガーおじさんとの間で攻防が繰り広げられるという流れは原作を踏襲しています。ただし中心となるのは、ピーター率いるウサギ集団と、マグレガーおじさんの親戚で動物嫌いのトーマス・マグレガーとの、まさに仁義なき戦い、壮絶なバトル。監督がそのバトルで目指したのは『バンビ』よりも『プライベート・ライアン』のように展開させることだったそうで、ほとんどもう、アクション映画の域です。
 ピーターもマグレガーも、あの手この手で相手を出し抜こうと策を練っては仕掛けるうち、どんどんエスカレート。ついには電気フェンスや爆薬まで登場し、お互いの生命を脅かすまでに…。本来ならマグレガーの言い分や立場は同情を買うはずなのですが、そこは、どれだけ悪い顔を連発しようとも、ピーターがやっぱり可愛くて、観ている側はどうしても害獣、もといウサギたちに肩入れしてしまいます。そんなバトルの根底には、人間と動物の共存の在り方、というテーマもあるにはあるのですが、押しつけがましくないところが、本作の愛すべきポイントにもなっています。

 主人公のピーターラビット以下、動物たちはモーションキャプチャーではなくフルCGの産物。ウサギが洋服を着て、歌って踊っている姿にも、映画が始まって間もなく違和感を覚えなくなっているから不思議です。表情豊かな毛並みも鼻も耳もしっぽも、本物と見惑うほど。あたかもそこにしゃべるウサギが実在するかのように俳優たちと接触する場面も出てきますが、それがごく自然に映像として成立しているところに、製作陣の苦労が偲ばれます。
 壮絶な戦いの場となる庭のある英国らしい田園風景は、実際に原作者のポターが暮らした湖水地方と、オーストラリアのシドニーにあるセンテニアル・パークで撮影されたもの。まばゆい日の光の中に緑が溢れ、花咲き乱れ、野生動物(CGだけど)が駆け回るのどかな風景は、それはそれは美しく、絵本のピーターラビットの世界、ファンタジーそのものです。もし万が一、本作のわんぱくすぎるピーターを受け入れ難い原作のファンがいたとしたら、せめて周りの風景だけでも楽しんでもらいたいものです。

 また、宿敵マグレガーの職場は、ロンドンのナイツブリッジにある老舗百貨店、ハロッズという設定で、撮影は、実際のハロッズの店内で、閉店後の夜間に行なわれました。原作者、ビアトリクス・ポターの描くキャラクターのグッズを20世紀初めから扱ってきたハロッズは、今回の撮影を前のめりで快諾したそうです。ちなみに、ハロッズで映画の撮影が実現したのは、実に90年ぶりのことだとか。

 監督・脚本・製作は『ANNIE/アニー』のウィル・グラック。この作品でも、ピーターや動物たちの歌と群舞など、ミュージカルの要素が随所に取り入れられています。また、軽妙なせりふ回しは、テレビの構成作家出身というキャリアの賜物でしょうか。なにより、あのピーターラビットのいかにも人畜無害なイメージを、伝統と気品を損なわない程度に打ち破った、その思い切りの良さには拍手を贈りたくなります。

 ピーターの声を担当するジェームズ・コーデンは、イギリス出身ながら米CBSの夜中のトークショー「レイト×2ショー with ジェームズ・コーデン」の司会として、全米では知らない人はいない人気俳優。この冠番組では、有名人をゲストに車の中で歌うコーナーが特に人気で、ミシェル・オバマ元大統領夫人の回など、たびたび日本のワイドショーなどでも取り上げられているので、ご存じの方も多いでしょう。映画『はじまりのうた』や『イントゥ・ザ・ウッズ』で披露した彼の芸達者ぶりは、ここでも存分に発揮されています。一方、ピーターたちを本来の愛らしいウサギさんとして可愛がり、常に味方をしてくれるのは、ビアトリクス・ポッターをモデルにしたと思われる、画家のビア。演じているのは、テレビ・シリーズ「ダメージ」でグレン・クローズにいたぶられ、いつも困り顔だったローズ・バーン。映画では『X-MEN』シリーズや、本作のグラック監督がメガホンを執った『ANNIE/アニー』にも出演しています。トーマスに扮するのはアイルランド出身のドーナル・グリーソン。『レヴェナント:蘇えりし者』や『スター・ウォーズ』シリーズの近作で重要な役に起用されてきました。今回も悪役と言えば悪役ですが、同情の余地のあるところが、これまでと少し違う点でしょうか。このバーンとグリーソンはそれぞれ、本作でアヒルとカエルの声も演じているところに注目。さらに、出番こそ少ないものの強い印象を残すマグレガーおじさん役はベテラン、サム・ニール。『ジュラシック・パーク』の博士役を思い返すと、じいさん役が似合う風貌になったものだなと、正直、時の流れを感じてしまいます。(佐武 加寿子)

『ピーターラビット』5月18日〔金)TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国ロードショー 
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
http://www.peterrabbit-movie.jp/